(1) F翻訳学校(通信・通学)
まずは翻訳学校での学習経験から話します。翻訳を教える学校は数多くあります。私は翻訳業界というものが実際の翻訳仕事で成り立っているのか、それとも翻訳者になりたいという夢をサポートする翻訳教育ビジネス(翻訳学校、個人の翻訳講座、セミナー、翻訳ツール、翻訳のお役立ち情報、翻訳者向けの書籍・雑誌など)で成り立っているのかと非常に疑問に思うことがよくあります。翻訳学校を利用する場合、受講費用として数万円から数十万円を支払うためハードルは高いでしょう。地理的な問題から翻訳学校で学ぶことを敬遠する方もいるかもしれません。そして、自己流でやったり、ネットの無償の情報を探しまくったりするのです。私の経験から言うと、何かを習得する場合に独学で続けた結果、やっぱりちゃんとした教育を最初から受講しておけばよかったと思うことが多々ありました。いろいろと資格試験を受けていますが、うろうろと迷うよりは、最初に講座を受講して、土地勘をつかんだ後に自分で学習していく方が、はるかに効率がよかったのではないかと思うのです。特定の翻訳学校でなければいけないということは無く、実績のある学校や講座であれば得られるものはあると思います。何らかの理由で学校を利用できない、または利用しないということもあるかとは思いますので、状況に応じて勉強法を選択すればよいと思います。
私の場合、翻訳学校で最初に学んだのは翻訳の基礎レベルの通信講座です。これはかなり昔の話で、この頃はどの分野を専門にするか以前の話で、ただ「翻訳がうまくなったらいいなぁ」という漠然とした思いしかありませんでした。独立、開業するということすらも考えてもいないほど昔です。そのため、たんたんと課題をこなしはしましたが、特別な達成感というものはありませんでした。あくまでも趣味レベルでしか考えていなかったからだと思います。
その後しばらくの間、翻訳のことは忘れていました。改めて翻訳について考えたのは、役職定年を意識し始めた40代後半ぐらいです。そこで役職定年に備えて、時間をかけて準備しようと思い直し、今度は翻訳分野を決めて受講することにしました。通信講座だとモチベーションの維持が大変だと思ったので、通学講座を受講することにしました。その時に初めて、翻訳分野としてメディカルを選択して講座を受講しました。ITを生業とする私にとって医学・薬学は全く新しい分野です。それでも、ITとは違う何かを新たに学びたいと考えて選択しました。高校時代は医歯薬系の学部に進学することを考えていましたが、高校3年ぐらいで別の学部に目移りして以来、メディカル分野とは何のつながりもありませんでした。持論ですが、人間は中学・高校あたりで興味があったことが、本当に好きなものではないかと思っています。人生後半はふらふらとそこに戻ってくる気がします。
F翻訳学校では毎回、講師から出される課題を訳し、授業で解説を受けるという進め方です。そのやり方で、特に違和感なく学習しました。そこで印象に残った講師の方がいました。毎回、すっと現れてすぐに本題に入り、淡々と授業をすすめていきます。説明も明快で、時間の無駄がなく、お金を払う側としては、すごく得した気持ちになったことを覚えています。その講座では受講者が3人しかいなかったため、積極的に疑問点を聞くこともできました。社会人経験は豊富なずうずうしいおじさんなので、ここぞとばかりに質問したおしました。他の受講者には迷惑だったかもしれませんが、疑問に思う内容はみな同じだと思うので、私が代わりに恥ずかしげもなく質問することで役に立ったのではないかと思います。隙を見て講師に質問できるという所は、通学講座の大きなメリットだと思います。
本当は禁止されていますが、最初の講座で講師にことわったうえで授業を毎回録音して、少しの情報も逃さないように後で文字起こしをして復習していました。時間はかかりますが、文字起こしをすることで記憶がよみがえり、知識の定着に役立ちます。こうした授業の振り返りの中で、課題、自分の訳、講師の試訳、講師の説明内容、受講者からの質問・回答などを1つのWordファイルにまとめたものは、今でも時々見返しています。こうして学習をまとめた形で保存しておくことで、あとで検索したり、復習したりするときの効率が格段に良くなります。
在職中に受講したのはF翻訳学校だけですが、退職のタイミングでいくつか通信講座を受講しています。私がいた会社では、早期退職する場合、退職後の仕事に関する教育費として一定額の費用を負担してくれるという制度がありました。それを限度額一杯まで利用して受講したものです。若い人たちからすればうらやましい制度かもしれませんが、シニアにとっとと会社から飛び立ってもらうための制度です。シニアの方たちは自分の会社にどのような制度があるかを調べてみることをお勧めします。退職金ですらどんどん減額される時代です。最後まで会社に残り続けるのも選択肢の1つですが、使える制度はしっかりと認識しておきましょう。
(2) S翻訳学校(通信講座)
S翻訳学校では医学・薬学の通信講座を受講しました。S翻訳学校の通信講座ではメディカル翻訳のテキストがあり、基本的な専門知識についての説明や訳例が載せられています。その中に添削課題も含まれています。これだと、講師も受講生もそのテキストを基準とすることができ、講座の品質を維持するという面で大きなメリットがあります。私が添削していただいた講師は、薬剤師で翻訳もやられている方でしたが、説明が明快でいろいろと新たな気付きがありました。
ちなみに、F翻訳学校の通学講座ではテキストはありませんでした。講師が自分で課題を選んでそれを基に授業が行われていると思われます。通信講座についてはホームページの記述を確認しましたが、基本的に送られて来る課題を提出して、それが添削されて返却されるだけのように読めます。どちらのスタイルが良いと言っているわけではありません。どちらにも良い点はあると思います。
この講座についても課題だけではなく、テキスト内の演習についても対訳+解説+自分の気付きを1ファイルにまとめてあります。こうすれば、数冊に分かれたテキストを開きなおす手間がなくなります。
(3) DHC日英メディカル(通信)
DHC日英メディカルは日英の通信講座としては有名だと思います。実際に受講すると、テキストが充実しており、これまで疑問に思っていたことが解決することも多く非常に役立ちました。課題の添削はネイティブが行っており、質問にもネイティブが回答してくれます。難度が高い講座だと思いますが、総合評価としては一番高いAAという評価を得ることができました。メディカル分野の日英翻訳を行うのであれば、受講した方が良いとお勧めしたかったのですが。。。いまサイトで情報を確認しようとしたところ、DHC日英メディカルが見当たりません。もう講座として無くなってしまったのかもしれません。無くなったのだとすると非常に残念です。昨今のインフレと円安のせいで、提示する条件で受けてくれるネイティブがいなくなってしまったのかな。。。邪推はいけませんね。メルカリを見るとテキストを出品している方がいますが、ちょっと躊躇する金額ですね。
(4) AMWA Essential Skills Certificate Program(通信講座)
American Medical Writers Association (AMWA) のEssential Skills Certificate Programという通信講座を受講しました。翻訳の講座ではなく、メディカルライティングの講座です。海外で仕事を得る際に、医薬系の実務経験がないことを補うため、少しでもアピール材料になればという考えから受講しました。当然のことながらすべて英語なので、英語脳になるという点でも役立ちます。
コメント