acceptable (許容) と tolerable (忍容) について

ニューイングランド師匠

acceptable と tolerable の訳について、少し前に気になったので、記録として書くことにした。

決して何かを責めようとか否定的な気持ちは一切ないので、興味のある方はたんたんと読んでほしい。

NEJMのアブストラクトを読み始めてから長いが、最初は”acceptable”を「許容」と訳した例文に出会った。これ以前の訳は知らない。

2013/2/7_(3)

There is a need for a simple and efficacious treatment for cutaneous leishmaniasis with an acceptable side-effect profile.

皮膚リーシュマニア症に対して,簡単かつ有効で,許容しうる副作用プロファイルの治療が必要とされている.

その後かなり長い間、”acceptable”には、9割方「忍容」という訳が使われてきた。一方、tolerableについては出会う回数は少ないが、「忍容」という訳が使われている。

2013/11/7_(1)

We enrolled 449 heavily pretreated patients who had CML or Ph-positive ALL with resistance to or unacceptable side effects from dasatinib or nilotinib or who had the BCR-ABL T315I mutation.

CML または Ph 陽性 ALL で,複数の前治療歴を有し,ダサチニブまたはニロチニブに抵抗性を示すか,忍容できない副作用が生じる患者,もしくは BCR-ABL に T315I 変異を有する患者 449 例を登録した.

しかし、最近は”acceptable”の訳として「許容」という言葉も復活し始めたように思える。そこで、おっ!と思い、この記事を書いているのである。しかし、同日公開の訳でも異なるといったゆれはある。

2021/12/9_(3)

The mRNA-1273 vaccine had an acceptable safety profile in adolescents.

mRNA-1273 ワクチンは,思春期児において許容可能な安全性プロファイルを示した.

2021/12/9_(4)

Patients were treated with renin–angiotensin system blockade that had been adjusted before randomization to the maximum dose on the manufacturer’s label that did not cause unacceptable side effects.

患者にはレニン–アンジオテンシン系阻害薬による治療を行った.用量は無作為化の前に,製薬会社の添付文書記載の,忍容できない副作用を引き起こさない最大用量に調節された.

ちなみに「ICH E9 臨床試験」では以下のような対訳があり、その観点から、acceptableは「許容」、tolerableは「忍容」が良いと思われる。

In the majority of trials investigators are seeking to establish that there are no clinically unacceptable differences in safety and tolerability compared with either a comparator drug or a placebo. As is the case for non-inferiority or equivalence evaluation of efficacy the use of confidence intervals is preferred to hypothesis testing in this situation. In this way, the considerable imprecision often arising from low frequencies of occurrence is clearly demonstrated.

https://www.pmda.go.jp/files/000156905.pdf

大多数の試験で、治験責任医師たちは、実対照薬又はプラセボに比べて安全性及び忍容性に関して臨床的に許容できない差はないことを立証しようとしている。有効性に関する非劣性又は同等性評価の場合と同様に、この状況では仮説検定よりも信頼区間を使用することが望ましい。信頼区間を用いると、生起数が少ないことが原因となってみられること の多い、はなはだしい精度の低さを明確に示すことができる。

https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf

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