“clinical type 1 diabetes”の和訳が「顕性糖尿病」となっており、気になったのでちょっと調べてみた。
以下、2023/12/7の3番目のアブストラクト「新たに診断された 1 型糖尿病におけるテプリズマブとβ細胞機能」から。
[原文]
Teplizumab, a humanized monoclonal antibody to CD3 on T cells, is approved by the Food and Drug Administration to delay the onset of clinical type 1 diabetes (stage 3) in patients 8 years of age or older with preclinical (stage 2) disease.
[和訳]
T 細胞上の CD3 に対するヒトモノクローナル抗体であるテプリズマブ(teplizumab)は,1 型糖尿病の前臨床段階(第 2 期)にある 8 歳以上の患者の顕性糖尿病(第 3 期)の発症を遅らせる目的で,米国食品医薬品局に承認されている.
何もない状況から出発すると、”clinical”というと「臨床的に」と想像するし、逆に「顕性」で調べると”overt”となっていることが多い。
“clinically overt type 1 diabetes”という表現もあるが、USのGoogleで検索するとそれほど使われていない。
“clinically overt type 1 diabetes”:688件
“clinical type 1 diabetes”:31,000件
その他調べてみると、『糖尿病性腎症病期分類』では第 3 期で「顕性」という表現が使われている。
具体的には、“macroalbuminuria (stage 3)”が「顕性アルブミン尿期(第 3 期)」としている。
ちなみに“macroalbuminuria”を英辞郎で調べても「マクロアルブミン尿」と表示され、「顕性」という言葉は出てこない。
英辞郎というと軽く見る人もいるようだが、専門的な辞書よりもちゃんとした訳が出てくることが多く、侮れないと感じている。
ライフサイエンス辞書では“macroalbuminuria”はヒットすらしない。
また、『イラストでよく分かる糖尿病性腎症』では第3期が顕性腎症期となっている。
■糖尿病性腎症病期分類 2023 の策定
(Updated Staging of Diabetic Nephropathy 2023)
https://cdn.jsn.or.jp/data/DKD2023.pdf
■イラストでよく分かる糖尿病性腎症
https://www.onetouch.jp/sites/onetouch_jp/files/07hbshen_zheng_180123.pdf
参考までにこれまで記録してきたNEJMアブストラクトの中から「顕性」や「不顕性」を使った表現をピックアップしたので興味があれば。
20140313 | ③ | overt Cushing’s syndrome | 顕性クッシング症候群 |
20140828 | ④ | subclinical infections | 不顕性感染 |
20160728 | ② | progression to macroalbuminuria | 顕性アルブミン尿症への進行 |
20170831 | ④ | new-onset persistent macroalbuminuria | 持続性顕性アルブミン尿の新規発症 |
20171102 | ③ | development of microalbuminuria and macroalbuminuria | 微量アルブミン尿,顕性アルブミン尿の発現 |
20200130 | ④ | clinically silent | 臨床的に不顕性 |
20200402 | ① | overt signs of acute upper gastrointestinal bleeding | 急性上部消化管出血の顕性出血 |
20200514 | ④ | clinically overt bleeding | 臨床的な顕性出血 |
20201119 | ① | youth with newly diagnosed overt (stage 3) type 1 diabetes | 顕性(第 3 期)1 型糖尿病と新たに診断された若年者 |
20220120 | ③ | children and adolescents 5 to 17 years of age with latent rheumatic heart disease | 不顕性リウマチ性心疾患を有する 5~17 歳の小児・思春期児 |
20230112 | ③ | six persons with autosomal dominant LOCA who were members of three French Canadian families | フランス系カナダ人の 3 家系に属する常染色体顕性(優性)LOCA の 6 例 |
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